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後鼻漏の目次
≫鼻水がのどに落ちる、後鼻漏 ≫後鼻漏の原因と治療 ≫後鼻漏チェックリスト
≫後鼻漏に関する全国アンケート調査結果 ≫後鼻漏治療の来院データ ≫後鼻漏の症状と生活上の弊害
≫後鼻漏の分類 ≫粘膜注射療法の後鼻漏治療への適用 ≫後鼻漏のよくあるご質問 ≫後鼻漏と咳
長引く咳は後鼻漏の可能性
長引く頑固な咳、すなわち遷延性咳嗽もしくは慢性咳嗽の原因の一つとして後鼻漏の可能性があります。
鼻漏(鼻性分泌物)がのどに落ちることを後鼻漏といいます。その際にのどの粘膜表面に存在している多くの神経終末の咳受容体が後鼻漏によって刺激されますと、その都度咳反射が誘発されるようになります。
一般的に咳受容体の感受性(神経の過敏性)は男性よりも女性の方がより高いために、男性に比べ女性は咳を起こしやすいし、また長く続く傾向が見られます。
通常、咳の種類は大きく分けて、痰を伴う「湿性咳嗽」と痰を伴わない「乾性咳嗽」の二種類があります。
湿性咳嗽
後鼻漏由来の咳は、ほとんど痰がまつわる、絡み付くような湿った咳、すなわち「湿性咳嗽」となります。
我が国では「湿性咳嗽」をもたらす最も重要な原因疾患としては副鼻腔気管支症候群があげられます。この疾患に伴って現れる症状は、まさしく後鼻漏・痰・咳の三拍子揃いが特徴的です。
従いまして、咳嗽のうち、とりわけ湿性咳嗽が見られた場合は、必ず後鼻漏の存在に注意を払わなけらばなりません。後鼻漏が確認された場合、ひとまず注意深く鼻副鼻腔疾患の有無を精査する必要があります。
逆に後鼻漏の発生が見られなかった場合は、下気道疾患(肺炎、気管支炎、気管支喘息など)もしくは消化器疾患(逆流性食道炎など)を中心に診療を進めていけばよいかと思われます。
なお、鼻副鼻腔疾患はアレルギーや感染などによる炎症性のものから、鼻中隔彎曲症に代表される鼻腔形態異常性のもの、さらにポリープのような良性腫瘍性のもの、もしくは悪性腫瘍性のものまで、実に極めて多岐にわたります。的外れの治療を避けるためにも、後鼻漏の心当たりのある方は、是非早めに専門施設を受診されることが重要です。
乾性咳嗽
「乾性咳嗽」に関しましては、最も多く見られるのは咳喘息とアトピー咳嗽があります。
咳喘息は主に末梢気管支平滑筋の過敏性攣縮がトリガーとなって発症するものです。これ対して、アトピー咳嗽は主に中枢気道の気管や気管支表層にある咳受容体の感受性の亢進によって誘発されるものです。
両者とも何かの気道内分泌物の刺激によって咳が発症するものではなく、あくまでも気道自身の平滑筋や咳受容体の過敏性亢進によって直接引き起こされたものです。このことから、乾性咳嗽のほとんどは基本的に後鼻漏、言い換えれば鼻副鼻腔疾患との因果関係が非常に少ないものと考えられます。当然ながら、治療方針も湿性咳嗽と大きく変わります。
結局のところ、一言で咳と言っても、その性状や種類、発症メカニズム、原因疾患、随伴症状、治療方針等々は実に多様で複雑極まります。
各種の咳に対する的確な診断が治療の精度を高める上でとても大事なことをここに記しておきます。